AIが普及し、仕事のあり方や社会が変化していく中、人間に求められる能力なども変化しつつあります。その中で、AIに代替できない能力として、「人間のコミュニケーション能力」が見直されています。
今後、AIがさらに進化していく社会において、人間が持つもっとも基本的な能力であるコミュニケーション能力が大きく見直されています。
今回は、そんな本格的なAI時代の中で必要となるコミュニケーション能力について解説を行っていきます。
AI時代のコミュニケーションとは
総務省が2016年にまとめた「情報通信白書(平成28年度)」の中の「第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」の中に興味深いアンケート結果が記載されています。
「人工知能(AI)の活用が一般化する時代に求められる能力として、特に重要だと考えるものは何か」という日本および米国の就労者を対象としたアンケートに対し、日本の就労者は「コミュニーション能力やコーチングなどの対人関係能力」という答える人が一番多い(35.9%)という結果が出ました。
今から5年前の時点で、本格的なAI時代の到来を前に、技術よりもコミュニケーション能力を大切だと考える人が多かったのです。
ちなみに米国の就労者の回答では「情報収集能力や課題解決能力、論理的思考などの業務遂行能力」と答える人が51.9%と一番多く(日本は27.5%)、日本と米国でAI時代に求められる能力に対する考え方の違いが如実に表れる結果となっています。
なぜAI時代の中でコミュニケーション能力が大切になるのか
では、なぜAI時代の中でコミュニケーション能力が重要となるのでしょうか。
同レポートの中には先の回答の結果に対して、「仕事をする上で必要な最も基本的な要素は、意欲(前向きな姿勢)と人間関係(円滑にコミュニケーションできること)であり、このことは人工知能(AI)が広く実用化されても変わることはない、基礎であり土台であるといえる」と分析しています。
この「コミュニケーション能力」は、AIという先端技術に関わらず、あらゆるビジネスにおいてもっとも大切かつ基本となるスキルだと言えます。
一般的なシステム開発でも、Webサイト制作でも、建設施工でも、医療現場でも、チームで何かを成し遂げるには、各自が積極的にコミュニケーションを図り、チームの総合力を向上させていく意識が重要となります。
AIは数ある技術の中でも特に最先端の技術だと言えますが、それを作り、利用するのはあくまでも人間です。AIそのもの研究開発やAIに知能をもたらす深層学習はもちろん、AIを用いて作業効率化を目指す場合など、どのような場面でもチームによる連携が欠かせません。それほどコミュニケーション能力は必要不可欠なスキルだと言えるのです。
どういった場面でコミュニケーション能力が重要となるのか
では、具体的にどのような場面でコミュニケーション能力が必要となるのでしょうか。
ここではビジネスコミュニケーションの観点から、AI時代に求められるコミュニケーション場面を紹介していきます。
コミュニケーションが特に重要となるシチュエーション
●相手の話をキャッチするとき
顧客の要求やリーダーの指示、同僚の主張など、相手の話を傾聴し、的確に要点を掴む能力はもっとも基本的なコミュニケーション能力だと言えます。ここがコミュニケーションの起点であり、把握した要点に対して自分なりの考えを述べていくことで次なる展開が生まれていきます。
●自分の主張を伝えたいとき
相手の話を傾聴するだけでなく、自分の考えを的確に伝えることもビジネスコミュニケーションでは大切です。特にミーティングや議論の場においては、各自が意見を述べることを求められることから、明確な根拠をもって自分の主張や考えを伝える姿勢や、冗長的にならず考えていることを的確に相手に伝えるスキルは特に重要だと言えます。
●交渉が必要なとき
意思決定につながる議論の場では、相手を説得したり、納得させるネゴシエーション能力なども大切です。この場合は明確な論拠をもって交渉を行うことに加え、こちらと相手の主張における最適な“落とし所”を見極める力なども重要です。
●相手から話を引き出したいとき
話し合いの中では、相手に質問したり、相手から話を引き出すことが必要な場面が多々あります。そうした場合においては「質問する力」も大切です。こちらの質問の意図が伝わりやすいような尋ね方や、相手の反応を見た上で一歩引いて話を引き出すような「押し」と「引き」の使い分けなどを組み合わせていくことが建設的な議論へとつながっていきます。
以上、コミュニケーションが重要となるシチュエーションを紹介してきましたが、何にも増して大切なのは「積極的にコミュニケーションを図る姿勢」です。AIという先端テクノロジーだからこそ、それを活用する人間はより活発にコミュニケーション図り合いながら議論を行い、人間にとってAIがより便利なものとなるよう進化をリードしていく必要があるのです。
AI時代のコミュニケーション能力を磨くには
では、AI時代のコミュニケーション能力を磨くには何が必要なのでしょうか。
重要なのは「AIという先端技術にとらわれ過ぎず、“人間対人間”のコミュニケーションを重ねながらスキルを磨いていく」という点です。
人間対人間のコミュニケーションは、会社生活はもちろん、日常生活の中にも溢れています。そうした機会一つひとつに対し、「コミュニケーションを磨くための訓練」という意識をもって取り組むことでコミュニケーション能力は磨かれていきます。
会社での会議やお客さまとの打ち合わせ、同僚や上司との談笑などに加え、オフタイムで友人と遊んだり、知人の相談に乗ったり、家族との団らんなど、さまざまな場面で発生するコミュニケーションの場面において、「相手の気持ちをもっと引き出そう」「分かりやすく話を伝えよう」といった意識をもって会話を行うことを心がけてみてください。その積み重ねがコミュニケーションの質向上へとつながっていくことでしょう。
まとめ
以上、AI時代のコミュニケーションについて解説を行ってきました。
今後、あらゆる分野でさらなるAI活用が進み、私たちの生活に大きな利便性をもたらせてくれるとともに、社会や仕事のあり方を大きく変えていくことでしょう。
さらに2045年にはAIの知能が人類の知能を超えるという技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えるとも言われています。
そんな時代においても、AIを活用するのはあくまでも人間であり、人間ならではのコミュニケーション能力は、今後より一層大切なものとなっていくことでしょう。